こんにちは。
マンション管理士の古谷太郎です。
今回は大規模修繕工事について話題にしたいと思います。
以前、大規模修繕工事について次のような相談を受けたことがあります。ちなみにこの方は一区分所有者であり、理事ではありません。
「理事会は大規模修繕工事について、管理会社に特命発注することで、総会決議を図ろうとしているが、価格が高いのではないか。また、相見積もとらないで、管理会社に丸投げしようとしている理事会は無責任ではないか。自分は理事ではないので、管理会社や理事会に何を言ってもあまり相手にしてもらえない。総会が1週間後に迫っているが、何とかならないだろうか。」
このような趣旨のご相談でした。しかしながら、「残念ながら今回の大規模修繕工事については手遅れです。」と申し上げるしかありませんでした。
なぜならば、大規模修繕工事は様々なプロセスを経て成り立つ事業であり、「発注の決議」は合意形成の最終段階ともいえるからです。
昨年度より私は、東京近郊のある管理組合(単棟型)の第二回大規模修繕工事の事業に関わらせていただきました。この管理組合が来る5月の臨時総会で大規模修繕工事の実施の承認を決議する予定ですが、ここまでたどり着くまでに次のようなプロセスをたどりました。
①大規模修繕工事の基本方針に等に関する検討
(設計管理方式による大規模修繕工事の実施を前提とする)
②修繕設計図書作成業務を内定
(管理会社に特命発注することとした)
③大規模修繕工事の検討及び実施に関する基本方針とマスタースケジュールの立案・採択
④通常総会で大規模修繕工事の検討スケジュール及び修繕実施設計図書の特命発注を承認(昨年の7月)
⑤修繕実施設計図書作成業務の発注→中間検討、報告など
⑥工事項目の確定
⑦工事会社の見積参加条件の検討、確定及び公募広告の掲載等
⑧修繕実施設計図書の納品(ここまでで年内)
⑨工事会社1次選考
(書類選考、見積依頼会社の決定、見積依頼)
⑩工事会社2次選考
(見積もり合わせ及びヒアリング選考対象会社の決定等)
⑪工事会社3次選考
(ヒアリング選考→工事発注会社の内定)
⑫工事実施計画案の作成と内定
⑬理事会にて工事実施計画案の採択
(5月中)
⑭臨時総会にて大規模修繕工事の実施の承認を決議
(5月下旬)
いかがでしょうか。
この相談者の方は、以上のプロセスの⑭の段階で私に相談に来られたのですが、検討及び合意形成における最終段階に来ており、もうこの段階で管理会社への特命発注を覆すのは難しいということがお分かりいただけると思います。
大規模修繕工事の適正な実施は資産価値の維持という観点にたっても、管理組合にとって非常に重要な事業といえます。
「適正な」というのは、管理組合が主体的にかつ透明・公正に事業を実施し、組合員に対する説明責任を遂行し、多くの組合員が納得できるような事業の実施をするということだと思います。
今回の相談者の方のように「手遅れ」ということにならないためにも、
「何かおかしいのではないか」と不安に思われたら早めにご相談ていたけたら幸いです。
マンション管理士
古谷 太郎